Today's Topic
補集合がからむ複雑な集合関係を簡単にするためには、ド・モルガンの法則を使うとよい。
この記事を読むと、この問題が解ける!
$$U = \left\{ x| 1から12までの自然数 \right\}$$
$$A = \left\{ x| xは12の約数 \right\}$$
$$B = \left\{ x| xは8の約数 \right\}$$
であるとき、
- \(\overline{\overline{A} \cap B}\)を求めよ。
- \(\overline{\overline{A} \cap \overline{B}}\)の要素を全て列挙せよ。
Contents
ド・モルガンの法則
ド・モルガンの法則ですが、その内容は共通部分・和集合の補集合についてです。
ド・モルガンの法則
- $$\overline{A \cup B} = \overline{A} \cap \overline{B}$$
- $$\overline{A\cap B} = \overline{A} \cup \overline{B}$$
証明は一旦後回しにして、このド・モルガンの法則が有効活用できる場面を見て行きましょう。
ド・モルガンの法則 例題
例題
$$U = \left\{ x| 1から12までの自然数 \right\}$$
$$A = \left\{ x| xは12の約数 \right\}$$
$$B = \left\{ x| xは8の約数 \right\}$$
であるとき、\(\overline{\overline{A} \cap B}\)を求めよ。
ド・モルガンの法則より、
となるので、
$$\overline{B} = \left\{ 3,5,6,7,9,10,11,12 \right\}$$
より、
(※見切れている場合はスクロール)
とわかりました。
普通に考えてみるとどうなるでしょうか。
(※見切れている場合はスクロール)
を満たす集合を考えればOKですね。
そこでまず、\(\overline{A} \cap B\)の要素を考えてみることにしましょう。
ということなので、
$$B = \left\{ 1,2,4,8 \right\}$$
の共通部分をとって
となります。
\(\overline{\overline{A} \cap B}\)はこの補集合なので、
(※見切れている場合はスクロール)
となりますね。
以上のことから、ド・モルガンの法則には次のことが言えそうです。
- 求める補集合が複雑な場合でも、いろいろな変形を施したりせず、なるべく簡潔に答えが出せる。
- より抽象的に考えることができるので、要素が列挙できないほど大きな集合を考える場合でも使うことができる
【直感的】ド・モルガンの法則の証明
ド・モルガンの法則はベン図を使って証明することができます。
ここでは\(\overline{A \cap B} = \overline{A} \cup \overline{B}\)を示します。
\(\overline{A}\)の部分を見てみましょう。
続いて、\(\overline{B}\)の部分を見てみよう。
以上より
が証明できました。
【論理的】ド・モルガンの法則の証明
ド・モルガンの法則は論理式で証明しようとすると、少しコツが必要です。
また高校数学では、あまり論理的に証明させることは多くないです。
しかし「2つの集合が等しい」ということを証明するための基本的な手順の練習にはなると思いますので、お暇があればぜひご覧ください。
\(\overline{A \cap B} = \overline{A} \cup \overline{B}\)の証明
まず\(\overline{A \cup B} = \overline{A} \cap \overline{B}\)を示してみます。
以前、
ポイント
\(A=B\)を示すためには\(A \subset B\) かつ\(A \supset B\)を示せばOK
ということを学びました。
参考【集合の包括関係・部分集合】部分集合の捉え方と等しい集合の条件を解説
また、
ポイント
集合\(A\)が集合\(B\)の部分集合(\(A \subset B\))であることを示すためには、
$$x \in A ならば x \in B$$
であることを示す
ということを学びましたね。
参考【集合の包括関係・部分集合】部分集合の捉え方と等しい集合の条件を解説
この2つを使って、次のように証明していきます。
-
STEP1\(\overline{A \cup B} \subset \overline{A} \cap \overline{B}\)であることを示す\(x \in \overline{A \cup B}\)ならば、\(x \in \overline{A} \cap \overline{B}\)であることを示せればクリア
-
STEP2\(\overline{A \cup B} \supset \overline{A} \cap \overline{B}\)であることを示す\(x \in \overline{A} \cap \overline{B}\)ならば、\(x \in \overline{A \cup B}\)であることを示せればクリア
-
STEP3\(\overline{A \cup B} = \overline{A} \cap \overline{B}\)を示す\(\overline{A \cup B} \subset \overline{A} \cap \overline{B}\)かつ\(\overline{A \cup B} \supset \overline{A} \cap \overline{B}\)であることに言及すればOK
STEP1 \(\overline{A \cap B} \subset \overline{A} \cup \overline{B}\)であることを示す
ココがポイント
集合\(A\)が集合\(B\)の部分集合(\(A \subset B\))であることを示すためには、\(x \in A ならば x \in B\)であることを示す
このポイントを抑えておくと、ここで証明すべきは
であるとわかります。
証明
\(x \in \overline{A\cup B}\)ならば、補集合の性質より\(x \notin A\cup B\)
つまり\(x\)は\(A, \ B\)の共通部分には含まれない。
ゆえに\(x \in \overline{A} \)かつ\(x \in \overline{B}\)
\(x\)は\(\overline{A}\)にも\(\overline{B}\)含まれるということなので、
$$x \in \overline{A} \cap \overline{B}$$
したがって、\(\overline{A \cup B} \subset \overline{A} \cap \overline{B}\)が示された。
STEP2 \(\overline{A \cap B} \supset \overline{A} \cup \overline{B}\)であることを示す
\(x \in \overline{A} \cap \overline{B}\)とすると、\(x \in \overline{A}\)かつ\(x \in \overline{B}\)
つまり、\(x \notin A\)かつ\(x \notin B\)
これはすなわち\(A, \ B\)どちらにも含まれないことを表すので\(x \notin A \cup B\)。
よって、\(x \in \overline{A \cup B}\)
以上より、\(\overline{A} \cap \overline{B} \subset \overline{A \cup B}\)が示された。
STEP3 \(\overline{A \cap B} = \overline{A} \cup \overline{B}\)を示す
上記STEP1、STEP2より、
(※見切れている場合はスクロール)
となるので、
が示された。
\(\overline{A \cup B} = \overline{A} \cap \overline{B}\)の証明
もう一方の法則は、先程示した
から求めることができます。
適当な集合\(X,\ Y\)を考えても
が成り立ちますね。
両辺の補集合を考えると、
このとき、\(\overline{\overline{X \cup Y}} = X \cup Y\)なので、
ここで\(X = \overline{A},\ Y = \overline{B}\)とおくと、
まとめ
まとめ
補集合がからむ複雑な集合関係を簡単にするためには、ド・モルガンの法則を使うとよい。
集合論は、これから学んでいく数学の根幹となる重要な議論です。
その中でも複雑な集合関係を、別の視点から理解できるド・モルガンの法則の価値はとても高いもの。
法則自体は簡単なものですので、ぜひ有効活用してください。
以上、「ド・モルガンの法則について」でした。
チェック問題
例題
$$U = \left\{ x| 1から12までの自然数 \right\}$$
$$A = \left\{ x| xは12の約数 \right\}$$
$$B = \left\{ x| xは8の約数 \right\}$$
であるとき、\(\overline{\overline{A} \cap \overline{B}}\)の要素を全て列挙せよ。
切って、入れ替える。
ド・モルガンの法則より、
$$\overline{\overline{A} \cap \overline{B}} = A \cup B$$
よって、集合\(A\)と集合\(B\)の和集合を求めれば良いので、
から、
となる。