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内積は物理の仕事を意味してる?!重要公式や計算方法など徹底解説

Today's Topic

$$\overrightarrow{a}\cdot\overrightarrow{b}=|\overrightarrow{a}||\overrightarrow{b}|\cos \theta$$

$$|a|^2=\overrightarrow{a}\cdot\overrightarrow{a}$$

小春
楓くん、ベクトルの内積って掛け算みたいなものなの?
ベクトルに掛け算という概念はそもそもないよ。ベクトルは平行移動を表すからね。
小春
そっか、移動と移動の掛け算って謎だもんね。じゃあ結局内積ってなに??
内積は物理の世界の「エネルギー」からやってきた考え方なんだ。これのおかげでベクトルの式変形の幅が一気に広がるよ!

 

こんなあなたへ

「内積がなにを意味しているのか知りたい」

「内積っていつ使うの?」

 

この記事を読むと、この意味がわかる!

  • 内積の意味するもの
  • 内積の重要公式・つかうポイント

 

 

内積の公式

ベクトルの内積は、2つのベクトルから生成するもので、

ポイント

2つのベクトルの内積とは

図のような2つのベクトル\(\overrightarrow{a},\ \overrightarrow{b}\)の内積は

$$\overrightarrow{a}\cdot\overrightarrow{b}=|\overrightarrow{a}||\overrightarrow{b}|\cos \theta$$

で求める。

とされています。

小春
2つのベクトルの大きさの積に、2つのベクトルのなす角の\(\cos\theta\)をかけるんだね...。謎すぎ

 

また、ベクトルの内積を成分表示で考えると、次のようなことがわかります。

ポイント

2つのベクトル

$$\overrightarrow{a}=\begin{pmatrix}a_x\\ a_y\\ \end{pmatrix}$$

$$\overrightarrow{b}=\begin{pmatrix}b_x\\ b_y\\ \end{pmatrix}$$

の内積は

$$\overrightarrow{a}\cdot\overrightarrow{b}=a_x b_x + a_y b_y$$

で求める。

小春
こっちは2つのベクトルのなす角が分からなくても求められるんだね。
ここで大事なのは、どっちの表し方も、左辺はベクトルの式、右辺は実数になっていることなんだ!
小春
ベクトルから実数のみの形にできるってことね!

 

ここから先は、内積の正体について考えていきましょう。

 

内積の意味→力のした仕事

内積を計算すること自体はそれほど難しいことではないのですが、内積がなにを表しているのか理解している人はそれほど多くいません

 

結論から述べると、内積は『力のした仕事』のことを表しています

小春
え、仕事??物理の話になるの?!
そもそもベクトル自体物理からの輸入品だからね。でも中学校理科レベルだから安心して!

 

下の図のように、ある物体を力\(F[N]\)で、力を加えた方向に\(x[m]\)だけ引っ張ってみます。

 物体を動かす仕事

このとき物体を動かす力Fは

$$W[J]=F\cdot x$$

だけ仕事をしています。

 

ここで大事なのが、物体を動かす力の向きと物体の移動する向きは、共に同じ向きでなければなりません。

つまり向きも考慮して正確にいうのであれば、下の図のようにベクトルで表記する方が正しいです。

物体を動かす仕事をベクトルで考える

このとき力\(F\)のした仕事は、

$$W=|\overrightarrow{F}|\cdot|\overrightarrow{x}|$$

と表せます。

これまでの力\(F\)や距離\(x\)は、ベクトルの大きさを考えていたってことね。

 

では、力の向きと移動する向きが異なっている場合はどうすればいいのでしょうか。

内積の意味を考える

 

答えは簡単で、そろえてあげればいいのです。

力\(F\)の向きを\(\overrightarrow{x}\)と同じ、水平方向にしてみましょう。

内積の意味を表す図

このとき斜辺が\(| \overrightarrow{F} |\)の直角三角形を考えると、\(\overrightarrow{F}\)が水平面から\(\theta\)だけ傾いているとき、水平方向に加わる力は

$$|\overrightarrow{F}|\cos\theta$$

と表せます。

 

よってこのとき力\(\overrightarrow{F}\)がした仕事は、

$$W=|\overrightarrow{F}|\cos\theta\cdot |\overrightarrow{x}|$$

となります。

 

順番を入れ替える(積の交換法則を使う)ことで、

$$W=|\overrightarrow{F}||\overrightarrow{x}|\cos\theta$$

となるので、力\(F\)のした仕事\(W\)が内積を表していることがわかります。

小春
確かに内積を表す形になってる!
このように内積で表すことで、どんな向きに引っ張った時でも仕事を考えられるようになったよ!

 

内積を使うポイント→実数・角度・垂直・ベクトルの大きさ

小春
物理の世界の内積は仕事を表せるからいいけど、数学ではどう使うの?

 

数学の世界のベクトルでは、内積の意味は全く重視されず、ベクトルを扱うための手法として内積が用いられます。

内積を用いることで得られるメリットは、主に次の3つ。

 

内積がくれるメリット①:扱いにくいベクトルから、扱いやすい実数に変換

ベクトルは、平行移動を表す数量として考えられました。

ベクトルの意味について復習したい人はこちらを参考にしてください。

 

実数などの数とは違い、向きを持つ特殊な数です。そのため

$$3+\overrightarrow{x}$$

のような計算は、あまり意味を持ちません。

\(3\times\overrightarrow{x}\)は、\(\overrightarrow{x}\)の3倍分移動すると解釈できるけどね。

 

つまり計算するとなると、ベクトル表記は正直めんどくさいわけです。

ここで内積の公式をもう一度見てみると、

$$\overrightarrow{a}\cdot\overrightarrow{b}=|\overrightarrow{a}||\overrightarrow{b}|\cos \theta$$

と、右辺が実数になっていることがわかります。

これによって、ベクトルを『計算する』という(数学では当たり前の)処理をしやすくなります。

つまりベクトルの問題では、かなり多用されるってことね。

 

内積がくれるメリット②:成分が分かっていれば、なす角がわかる

2つのベクトルの成分が分かっている場合、内積は

$$\overrightarrow{a}\cdot\overrightarrow{b}=a_x b_x + a_y b_y$$

と表すことができました。

 

成分が分かっている場合、ベクトルの大きさ\(|\overrightarrow{a}|,|\overrightarrow{b}|\)は、

$$|\overrightarrow{a}|=\sqrt{{a_x}^2+{a_y}^2}$$
$$|\overrightarrow{b}|=\sqrt{{b_x}^2+{b_y}^2}$$

で求めることができましたので、内積を

\begin{align} \overrightarrow{a}\cdot\overrightarrow{b} &= |\overrightarrow{a}||\overrightarrow{b}|\cos \theta\\\ &=\sqrt{{a_x}^2+{a_y}^2}\cdot\sqrt{{b_x}^2+{b_y}^2}\cos \theta\\\ \end{align}

(※見切れている場合はスクロール)

 

と表すこともできます。

 

よって、

$$a_x b_x + a_y b_y=\sqrt{{a_x}^2+{a_y}^2}\cdot\sqrt{{b_x}^2+{b_y}^2}\cos \theta$$

(※見切れている場合はスクロール)

が成り立つため、整理すると、

$$\cos\theta = \frac{a_x b_x + a_y b_y}{\sqrt{{a_x}^2+{a_y}^2}\cdot\sqrt{{b_x}^2+{b_y}^2}}$$

と、コサインの値を求めることができました。

あ、この式を覚えるとかやめてね。あくまで必要な時に導出できることが大事!

 

2つのベクトルの位置関係がいまいちわかっていないのに、コサインの値、つまりは角度が求められるようになりました。

小春
座標しか与えられていない状況で、角度がわかることで、より図形的に考えられるね!

 

内積がくれるメリット③:垂直条件があるとき、数学の神条件「=0」が使える

2つのベクトルが垂直に交差するとき、2つのベクトルがなす角は\(90^{\circ}\)になります。

垂直に交わるベクトルの内積は0

よって、内積は

\begin{align} \overrightarrow{a}\cdot\overrightarrow{b} &= |\overrightarrow{a}||\overrightarrow{b}|\underbrace{\cos 90^{\circ}}_{\color{red}{0}}\\\ &= 0\\\ \end{align}

となります。

つまり内積が0であれば、2つのなす角は\(90^{\circ}\)とわかりますね。

 

また、『=0』は、数学の中でもかなり有効な、そして強力な条件です。

図が示され、2つのベクトルのなす角が\(90^{\circ}\)になっている場合は、積極的に活用しましょう。

 

内積がくれるメリット④:どんなベクトルの大きさも求められる

2つのベクトルが、互いに同じである\(\overrightarrow{a}\)であるとした時、2つのベクトルの内積は

\begin{align} \overrightarrow{a}\cdot\overrightarrow{a} &= |\overrightarrow{a}||\overrightarrow{a}|\cos 0^{\circ}\\\ &=|a|^2\\\ \end{align}

(※見切れている場合はスクロール)

 

と表せます。

 

この式は逆から考えると、かなり有効です。

$$|a|^2=\overrightarrow{a}\cdot\overrightarrow{a}$$

この式は、ベクトルの大きさを2乗すると内積に分解できることを表しています。

ベクトルの『移動距離』を『内積』に変換する重要公式さ。

 

例題

$$|\overrightarrow{a}|=3,\ |\overrightarrow{b}|=2,\ \overrightarrow{a}\cdot\overrightarrow{b}=-1$$
を満たす時、以下の値を求めよ。
$$|\overrightarrow{a}+3\overrightarrow{b}|$$

ベクトルの大きさは、黙って2乗して内積分解すべし!

 

解答
\begin{align} |\overrightarrow{a}+3\overrightarrow{b}|^2 &= \left(\overrightarrow{a}+3\overrightarrow{b}\right)\cdot\left(\overrightarrow{a}+3\overrightarrow{b}\right)\\\ &= \overrightarrow{a}\cdot\overrightarrow{a}+6\overrightarrow{a}\cdot\overrightarrow{b}+9\overrightarrow{b}\cdot\overrightarrow{b}\\\ \end{align}

(※見切れている場合はスクロール)

 

注意

ベクトルの内積も分配法則・交換法則が成り立つため、

$$|\overrightarrow{a}+3\overrightarrow{b}|^2 = \overrightarrow{a}\cdot\overrightarrow{a}+6\overrightarrow{a}\cdot\overrightarrow{b}+9\overrightarrow{b}\cdot\overrightarrow{b}$$

$$(a+3b)^2=a^2+6ab+9b^2$$

(※見切れている場合はスクロール)

と、\(|\overrightarrow{a}+3\overrightarrow{b}|^2\)と\((a+3b)^2\)は、ほぼ同じ計算結果になります。

 

 

$$\overrightarrow{a}\cdot\overrightarrow{a}=|\overrightarrow{a}|^2$$

に注意すると、

\begin{align} \overrightarrow{a}\cdot\overrightarrow{a}+6\overrightarrow{a}\cdot\overrightarrow{b}+9\overrightarrow{b}\cdot\overrightarrow{b} &=|\overrightarrow{a}|^2+6\overrightarrow{a}\cdot\overrightarrow{b}+9|\overrightarrow{b}|^2\\\ &= 39\\\ \end{align}

(※見切れている場合はスクロール)

となるので、

$$|\overrightarrow{a}+3\overrightarrow{b}|=\sqrt{39}$$
ベクトルの大きさは移動距離だから、必ず正の値になるよ!
与えられたベクトルの大きさを求めるためには、まず2乗して見るってことがポイントだね!
小春

 

内積まとめ:ベクトルの式変形の定番

今日のまとめをします!

 

まとめ

ベクトルの内積は、物体を動かす仕事を表す。

ベクトルの内積は、

  • ベクトルを実数化できる
  • 2つのベクトルのなす角がわかる
  • 垂直条件の時、内積から最強の条件が手に入る
  • $$|a|^2=\overrightarrow{a}\cdot\overrightarrow{a}$$

のメリットがある。

 

ベクトルの内積は、本来の意味から離れてベクトル計算に大きな意味を与えます。

内積で重要な公式は、

$$\overrightarrow{a}\cdot\overrightarrow{b}=|\overrightarrow{a}||\overrightarrow{b}|\cos \theta$$
$$\overrightarrow{a}\cdot\overrightarrow{b}=a_x b_x + a_y b_y$$
$$|a|^2=\overrightarrow{a}\cdot\overrightarrow{a}$$

の3つだけ。

掛け算と混同してしまう人がいるけど、分配法則・交換法則を満たすこと以外は掛け算と共通点はないよ。

 

ベクトルの問題を解く上では必須の計算ツールになるので、ぜひいくつか練習問題をといて、さっさとマスターしてあげてください。

以上、「内積の本質と重要公式について」でした。

\今回の記事はいかがでしたか?/

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