Today's Topic
$$\overrightarrow{OB}=\overrightarrow{OA}+\overrightarrow{AB}$$
こんなあなたへ
「ベクトルの言っていることがわからない、何したいの?」
「ベクトルを使う場面がはっきりしない、必要なの?」
この記事を読むと、この意味がわかる!
- ベクトルの意味と基礎
- ベクトルの使い方
Contents
ベクトルの意味|平行移動を考えている
具体的な場面で考えてみましょう。
座標平面上に3つの点、
を考えてみます。
点Oを横に+3、縦に+1平行移動させると、点Aと一致します。この移動を\(\overrightarrow{OA}\)と表します。
同様に、点Aを横に+1、縦に+4平行移動させると点Bと一致し、この移動を\(\overrightarrow{AB}\)と表します。
ではここで、点Oから点Bに移動する方法について考えてみましょう。
点Oから直接、点Bに移動する場合、この移動は\(\overrightarrow{OB}\)と表すことができます。
一方で点Oから点Aに移動させて、点Aから点Bに移動させるような、点Aを経由する移動を\(\overrightarrow{OA}+\overrightarrow{AB}\)と表すことにすると、
と表すことができます。
ベクトルの成分表示|横にいくつ、縦にいくつ動いたか
ここまでは、点Oから点Aへの平行移動を\(\overrightarrow{OA}\)として、視覚的に捉えてきました。
でも結局、どんな平行移動をしたのか説明するには
を話してあげればいいですよね。
原点Oから点Aに平行移動した際、
\(x\)軸方向に+3、\(y\)軸方向に+1だけ動いているので、\(\overrightarrow{OA}\)を次のように表してみます。
このように点Oを、\(x\)軸方向に\(+p\)、\(y\)軸方向に\(+q\)だけ平行移動させて点Xに移動させたとき
と表す方法をベクトルの成分表示と言います。
先ほどの図をもう一度見てみましょう。
座標に着目してみると、
- 点Aから点Bに移動するためには、\(x\)軸方向に\(+1\)、\(y\)軸方向に\(+4\)だけ
- 点Oから点Bに移動するためには、\(x\)軸方向に\(+4\)、\(y\)軸方向に\(+5\)だけ
平行移動していることがわかります。
よって、\(\overrightarrow{AB},\ \overrightarrow{OB}\)は次のように成分表示できます。
$$\overrightarrow{OB}=\begin{pmatrix}4 \\5 \\ \end{pmatrix}$$
成分表示の場合、2つのベクトルの和は\(x,y\)それぞれの成分の和で表すことができます。
\(\overrightarrow{OB}=\begin{pmatrix}4 \\5 \\ \end{pmatrix}\)と、\(\overrightarrow{OA}+\overrightarrow{AB}=\begin{pmatrix}4 \\5 \\ \end{pmatrix}\)であることからも、
が成り立ちますね。
また移項しただけですが
というように分離もできます。よく問題で使う変形なので、合わせて覚えておきましょう。
等しいベクトルとは?|同じ「平行移動」を表す
ここでちょこっと補足です。
ベクトルはあくまで、平行移動を表すものであり、どの点を移動させたかは重要ではありません。
例えば、次の図を見てください。
- \(\overrightarrow{OP}\)は点Oから点Pへの平行移動を表す。
- \(\overrightarrow{QR}\)は点Qから点Rへの平行移動を表す。
ということから、別物のベクトルと見えますが、どちらも\(x\)軸方向に\(+2\)、\(y\)軸方向に\(+3\)の平行移動を表しています。
つまり同じ平行移動を表しているので、
が成り立ちます。
もちろん平行移動なので、2つの等しいベクトルには平行な関係があります。
ベクトルの大きさ|三平方の定理を考えている
ベクトルはこれまで、「横にいくつ、縦にいくつ」移動したかを表す数量として扱いました。
これに対してベクトルの大きさとは、始点から終点までの長さ、いわゆる最短距離のことを言います。
図の\(\overrightarrow{OP}\)の大きさは、線分\(OP\)の長さのことを指しています。
またこのベクトルの大きさを\(|\overrightarrow{OP}|\)のように表します。
2点間の距離を求める際、数学では三平方の定理が大変有効です。
そこで今回も、直角三角形を意識して三平方の定理を活用してみると、
\begin{align} OP &= \sqrt{2^2+3^2}\\\ &= \sqrt{13}\\\ \end{align}
よって、
となります。
一般化すると、ベクトル\(\overrightarrow{OP}=\begin{pmatrix}a\\ b\\ \end{pmatrix}\)のベクトルの大きさ\(|\overrightarrow{OP}|\)は
で求めることができる。
ベクトルの種類|「向き」「移動距離」「場所」に着目
逆ベクトル
図の\(\overrightarrow{OP}\)に対して、逆向きの平行移動を表す\(\overrightarrow{QR}\)を\(\overrightarrow{OP}\)の逆ベクトルといい、
のようにマイナス符号をつけて表します。
零ベクトル
ベクトル\(\overrightarrow{OP}\)と、その逆ベクトル-\(\overrightarrow{OP}\)を足してみる。
これは「行って帰ってくる」という平行移動を表し、結果的に元の位置から動いてはいないですよね。
よって元の位置から動かない平行移動を\(\overrightarrow{0}\)と表すものとすると、
が成り立ちます。
単位ベクトル
移動距離が1のベクトルのこと。
\(\overrightarrow{OP}\)の大きさ
なので、自身の大きさで割ってあげることで、求めることができます。
つまり単位ベクトル\(\overrightarrow{OP'}\)は
となります。
位置ベクトル
始点が原点のベクトルのこと。
\(\overrightarrow{OP}\)は位置ベクトルであるが、\(\overrightarrow{QR}\)は位置ベクトルではありません。
位置ベクトルを使うことで、平面上全ての点の位置を位置ベクトルで表すことができ、図形などを調べるときにかなり便利。
そのため使う頻度が高く、いちいち\(\overrightarrow{OP}\)と書くのはめんどくさいので、
と省略して表すことが多いです。
また原点Oから点Pまでの平行移動は、位置ベクトル\(\overrightarrow{p}\)で表すことができ、このような点Pのことを
と表記する。
方向ベクトル
ある直線に対して、平行なベクトルのこと。
図の直線\(l\)に対して、\(\overrightarrow{OP}\)と\(\overrightarrow{QR}\)はどちらも平行なので、両方とも直線\(l\)の方向ベクトルです。
法線ベクトル
図のように、直線\(l\)に垂直なベクトル\(\overrightarrow{n}\)のことを、直線\(l\)の法線ベクトルという。
ベクトルを考えるメリット|図形を数式に落とし込む
あなたは図形問題、得意ですか?
僕はかなり苦手だったんですけど、ベクトルのおかげで図形問題はなんとかクリアできるようになっていました。
しかし図形問題得意な人は、ベクトルなんか使わなくても一瞬で答えを導き出してしまいます。
この差は経験値によって作られた「図形的な才能」によって生じます。
しかしベクトルさえ使えれば、その「図形的な才能」を擬似的に獲得することができます。そうすることで「見ればわかるじゃん」に対して、「確かにそうだね」と返すことができる。
つまりベクトルは凡人が天才に追いつくための、図形を簡単に把握するためのツールなんです。
ベクトルを使うことで、感覚をしっかり数式に表現できるようになったわけですね。
実践的なベクトルの例題
ここでは少し簡単な実践例を見てみましょう。
ただしあくまで見るだけ、「あぁほんとだ。答え出せてるすげー」的な感覚で見てもらえれば大丈夫です。
例題
3つの点\(A(1,2),B(2,3),C(-1,1)\)がある。直線ABと垂直に交わり、点Cを通るような直線の方程式を求めよ。
(解答)
直線ABと、点Cを通る垂直な直線の交点を\(D(x,y)\)とする。
$$\overrightarrow{AB}=\begin{pmatrix}2-1\\ 3-2\\ \end{pmatrix}=\begin{pmatrix}1\\ 1\\ \end{pmatrix}$$
$$\overrightarrow{CD}=\begin{pmatrix}x-(-1)\\ y-1\\ \end{pmatrix}=\begin{pmatrix}x+1\\ y-1\\ \end{pmatrix}$$
\(\overrightarrow{AB}\perp\overrightarrow{CD}\)なので
$$\overrightarrow{AB}\cdot\overrightarrow{CD}=0$$
よって、
(※見切れている場合はスクロール)
以上より求める直線の方程式は、
$$x+y=0$$
ベクトルを使わない解法であれば、通常は点Dの座標を求め、直線CDの方程式を導出します。
それがベクトルを使えば、点Dの座標がわからなくても答えを求めることができました。これだけでも十分価値のある概念だと思いますよ。
ベクトルのまとめ
まとめ
ベクトルとは、「平行移動」を数として考えたもの
$$\overrightarrow{OB}=\overrightarrow{OA}+\overrightarrow{AB}$$
$$\overrightarrow{AB}=\overrightarrow{OB}+\overrightarrow{OA}$$
ベクトルの大きさは$$|\overrightarrow{OP}|=\sqrt{a^2+b^2}$$で求める。
逆ベクトル、零ベクトル、単位ベクトル、位置ベクトル、方向ベクトル、法線ベクトルは「向き」「距離」「場所」に着目している。
ベクトルは最初、取っ付きにくいイメージを持ってしまいがちですが、理解できれば図形問題がより簡単に考えることができる、大変優秀な数です。
大学数学でもこのベクトルを用いて、人間の感覚では見えない4次元以上の図形を考えたりもします。
言い換えれば、図形問題が嫌いな人ほど、マスターすべきツール。
ぜひとも使えるようになってください!
以上、「ベクトルって何?」についてでした。