Today's Topic
『複素数\(a+bi\)に対して、\(a-bi\)で表せる複素数を、共役な複素数という。』



こんなあなたへ
「共役な複素数って、何か特別なの?」
「共役な複素数の性質や使い方が知りたい!」
この記事を読むと、この意味がわかる!
- ある二次方程式の解が、\(x=3+2i\)であった。このときのもう1つの解を求めよ。
- \(z+\frac{1}{z}\)が純虚数ならば、複素数\(z(z\neq0)\)も純虚数であることを示せ。

複素数を一気に理解したい方への記事は、こちらにまとめてあります。
Contents
共役(きょうやく)な複素数とは
定義
複素数\(a+bi\)に対して、\(a-bi\)のように虚部を\(-1\)倍した関係にある複素数のこと。
例えばこんな感じ。
$$3-i \rightarrow 3+i$$
$$\sqrt{2}i \rightarrow -\sqrt{2}i$$
$$5 \rightarrow 5$$


共役な複素数による重要性質4つ
ここからは共役な複素数が見せる、とても便利な性質をご紹介していきます。
共役な複素数を足す/掛けると実数化する
複素数\(a+bi\)に対して、共役な複素数を足してみます。
(※見切れている場合はスクロール)
ご覧の通り、虚部が相殺して実部が2倍された数のみ残りました。


(※見切れている場合はスクロール)
次に、共役な複素数を掛けてみましょう。
(※見切れている場合はスクロール)
こちらもまた、虚部が相殺して実数のみになりました。
出来上がった実数\(a^2+b^2\)は、必ず正の値しかとらないことも大切です。
共役な複素数は分割できる
複素数\(z\)に対して、共役な複素数を\(\overline{z}\)と表します。
このとき、2つの複素数\(\alpha,\beta\)について、以下2つの性質が成り立ちます。
- $$\overline{\alpha\pm\beta}=\overline{\alpha}\pm\overline{\beta}$$
- $$\overline{\alpha\beta}=\overline{\alpha}\cdot\overline{\beta}$$




また、\(\overline{\alpha\beta}=\overline{\alpha}\cdot\overline{\beta}\)より
- $$\overline{\alpha^n}=\left(\overline{\alpha}\right)^n$$
- $$\overline{k\alpha}=k\overline{\alpha}(kは実数)$$
ということもできます。


\(a+bi\)が(実数係数の)方程式の解になるとき、共役複素数\(a-bi\)も解
方程式の解に\(1+i\)が含まれるとき、\(1-i\)も必ず解になっているという、一度で2度美味しい性質です。
いきなりこの証明に取り掛かるのは厳しいので、まずは実験をしてみましょう。
二次方程式\(x^2+2x+3=0\)を考えてみると、解の公式から
となります。


では三次方程式\(x^3=1\)を考えてみましょう。
\(x=1\)は解になるので、\(x^3-1=0\)は\((x-1)\)で因数分解できるはずです。
整式の割り算等を駆使して、
のように因数分解します。
すると\(-x^2-x-1=0\)を考えればよく、二次方程式に落とし込むことができます。
解の公式から
となり、これも共役複素数が答えになっていることが確認できました。
ではここから、一般的に\(n\)次方程式の証明をしてみましょう。
\(n\)次方程式
(※見切れている場合はスクロール)
が虚数解\(z=a+bi\)を持つと仮定します。
ここから\(\overline{z}=a-bi\)が解として求められることを示せばOKですね。


step
1整式\(f(\overline{z})\)を\(f(z)\)に帰着させる。
\(n\)次方程式\(\overline{f(z)}\)について考える。
上記で既に説明した共役複素数の性質\(\overline{\alpha\pm\beta}=\overline{\alpha}\pm\overline{\beta}\)より
と変形できる。
さらに、共役複素数の性質
- \(\overline{k\alpha}=k\overline{\alpha}(kは実数)\)
- \(\overline{\alpha^n}=\left(\overline{\alpha}\right)^n\)
を順に使うことにより、
(※見切れている場合はスクロール)
となり、これは\(f(\overline{z})\)を表す。
よって\(\overline{f(z)}=f\left(\overline{z}\right)\)が言える。
step
2実数の共役複素数は、そのまま
問題の条件から、\(f(z)=0\)が成り立つのだった。


実数\(0\)は複素数\(0+0i\)と一致するので、0の共役複素数は\(0-0i=0\)となる。
ゆえに\(f(z)=0\)ならば、\(\overline{f(z)}=\overline{0}=0\)となる。
step
3Step1、2を連結
- Step1より、\(\overline{f(z)}=f\left(\overline{z}\right)\)
- Step2より、\(\overline{f(z)}=\overline{0}=0\)
繋げると、
\(\overline{f(z)}=0\)ならば、\(f\left(\overline{z}\right)=0\)
となる。
よって\(n\)次方程式が複素数を解に持つとき、その共役複素数も解になることが示された。
お疲れちゃん。
数Ⅲ複素平面上で\(x\)軸対称の位置にいる
複素平面上で2つの複素数\(1+1i\)、\(-3+2i\)とその共役複素数をプロットすると、図のような位置関係にいます。


この図から、複素数\(z\)と共役な複素数\(\overline{z}\)には次のような関係があると言えます。
- \(x\)軸対称
- 原点からの距離が等しい
特に後者の性質から、\(z=a+bi\)とすると、
$$|z|=|\overline{z}|=\sqrt{a^2+b^2}$$
と言えます。


これは、最初らへんに述べた
『複素数とその共役複素数の積は、非負実数\(a^2+b^2\)になる』
という感覚とも一致しますね。
まとめ


まとめ
複素数\(z=a+bi\)と、その共役な複素数\(\overline{z}=a-bi\)について
- \(z+\overline{z}=2a\)
- \(z\overline{z}=|z|^2=a^2+b^2\)
- \(|z|=|\overline{z}|\)
- 方程式の解が\(z\)のとき、\(\overline{z}\)も解
2つの複素数\(\alpha,\beta\)について
- \(\overline{\alpha\pm\beta}=\overline{\alpha}\pm\overline{\beta}\)
- \(\overline{\alpha\beta}=\overline{\alpha}\overline{\beta}\)
- \(\overline{\alpha^n}=\left(\overline{\alpha}\right)^n\)
- \(\overline{k\alpha}=k\overline{\alpha}\)




共役複素数を持つ複素数の世界では、感覚的にはちょっと不思議な、でも成り立つとありがたい性質がこんなにもあります。
これから先、複素数の問題を解いていけばわかりますが、この特殊な性質を使わない問題はまずありません。
この性質を完璧に理解して、自分のものにすることで、複素数はちゃんと得点源になりますよ。
以上、「共役複素数について」でした。
Q.ある二次方程式の解が、\(x=3+2i\)であった。このときのもう1つの解を求めよ。
複素数が方程式の解となるとき、共役複素数もまた解になる。
よって\(x=3+2i,3-2i\)を解に持つ。
Q.\(z+\frac{1}{z}\)が純虚数ならば、複素数\(z(z\neq0)\)も純虚数であることを示せ。
複素数と共役複素数の和は、虚部が相殺して実数になる。
これより純虚数とその共役複素数の和は0になるはずである。
よって、
$$\left(z+\frac{1}{z}\right)+\overline{\left(z+\frac{1}{z}\right)}=0$$
整理すると、
$$(z+\overline{z})+\frac{\overline{z}+z}{z\overline{z}}=0$$
となる。
\(z\overline{z}=|z|^2\)に注意して\((z+\overline{z})\)でくくると、
$$(z+\overline{z})\left(1+\frac{1}{|z|^2}\right)=0$$
\(\left(1+\frac{1}{|z|^2}\right)>0\)より、\((z+\overline{z})=0\)
これが成り立つとき、実部は0のはずである。よって\(z\)は純虚数。