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収束する2つの数列\(\{a_n\},\{b_n\}\)の極限は、極限値を求めなくても
$$a_n≦b_n\ (n=1,2,3,\cdots)$$
であれば、\(\alpha ≦ \beta\)となる。
これにより、極限値が直接求まらなくても、大小関係は比較することができる。
この記事を読むと、この意味がわかる!
- 数列の極限の大小関係は、極限を求めずに把握できる
- グラフから、感覚的に数列の極限の大小関係を把握できるようになる
Contents
数列の極限の大小関係
数列の極限の大小関係で押さえておくべき公式はこれ!
ポイント
2つの数列\(\{a_n\}, \{b_n\}\)が、それぞれ\(a_n \underset{n\to \infty}{\longrightarrow} \alpha,\ b_n \underset{n\to \infty}{\longrightarrow} \beta\)となるとき
どの項に対しても\(a_n≦b_n\)が成り立つならば、\(\alpha≦\beta\)
また、この公式から次のことも言えます。
おまけの公式
- ある実数\(X\)に対して、どの項でも\(a_n≦X\)が成り立つならば、\(\alpha≦X\)
- ある実数\(X\)に対して、どの項に対でも\(Y≦b_n\)が成り立つならば、\(Y≦\beta\)
それでは、詳しく見ていきましょう!
ポイントは『グラフをイメージすること』です。
\(a_n≦b_n(n=1,2,3,\cdots)\)ならば、\(\alpha≦\beta\)
具体的に考えてみましょう。
例題
2つの数列\(\{a_n\},\{b_n\}\)の一般項が、それぞれ
$$a_n=-\frac{1}{n},\ b_n=\frac{1}{n}+1$$
のとき、極限値の大小を比べてみよう。
厳密な証明は大学で行うので、ここでは感覚的に捉えておけばOK。
そのためにグラフを用いて、大小関係を把握してみましょう。
\(a_n=-\frac{1}{n}\)を\(y=-\frac{1}{x}\)、\(b_n=\frac{1}{n}+1\)を\(y=\frac{1}{x}+1\)と読み替えてみます。
ただし、数列における\(n\)は自然数なので、この時の\(x\)は自然数の値しか取りません。
この条件のもと、グラフを描いてみるとこのようになります。
グラフを見てみると、\(n\)がどんな値をとっても\(a_n≦b_n\)が常に成り立つのであれば、\(a_n\)の極限値が\(b_n\)の極限値よりも小さいことが分かりますね。
この公式の凄いところは、直接極限値を求めなくても、数列の大小関係だけで極限値の大小関係がわかるところです。
ここに注意
2つの数列が、\(a_n<b_n(n=1,2,3,\cdots)\)のような関係でも、極限値\(\alpha,\ \beta\)が\(\alpha<\beta\)とは限らず、\(\alpha = \beta\)となることもあります。
例えば、
$$a_n = -\frac{1}{n},\ b_n=\frac{1}{n}$$
とすると、グラフより、常に\(a_n<b_n\)であることは明らかですが、その極限値は同じく0であることが分かります。
\(a_n≦X(n=1,2,3,\cdots)\)ならば、\(\alpha≦X\)
先ほどの公式
どの項に対しても\(a_n≦b_n\)が成り立つならば、\(\alpha≦\beta\)
の数列\(\{a_n\},\{b_n\}\)が
のような場合を考えてみます。
すると、グラフは見てわかる通り、数列\(\{a_n\}\)のどの項も3より小さいため、極限値も3を下回っていますね。
\(Y≦b_n(n=1,2,3,\cdots)\)ならば、\(Y≦\beta\)
これも1つ目の公式をもとに考えれば、それほど難しくありません。
どの項に対しても\(a_n≦b_n\)が成り立つならば、\(\alpha≦\beta\)
の数列\(\{a_n\},\{b_n\}\)が
のような場合を考えてみます。
すると、グラフは見てわかる通り、数列\(\{b_n\}\)のどの項も\(-1\)より大きいため、極限値も\(-1\)を上回っていますね。
数列の極限の大小関係の注意点
今回扱った公式には、いくつか勘違いしやすい点があります。
どの項でも大小関係が覆らない
まず、3つの公式の前提には
ということが挙げられています。
そのため、例えば
という場合には、これら3つの公式は使えません。
収束すること
そして3つの公式では、2つの数列が極限値\(\alpha,\beta\)を持っていることも前提に含まれています。
つまり、これは数列が収束することが仮定されているので、発散する場合にこれらの公式は使えないということになります。
参考【追い出しの原理】不等式を作って、発散することを示せばOK。あんまり使われないけどね・・・。
まとめ
まとめ
収束する2つの数列\(\{a_n\},\{b_n\}\)の極限は、極限値を求めなくても
$$a_n≦b_n\ (n=1,2,3,\cdots)$$
であれば、\(\alpha ≦ \beta\)となる。
これにより、極限値が直接求まらなくても、大小関係は比較することができる。
今回得たこの大小関係の公式は、これから先かなり重要になる『はさみうちの原理』のもとになります。
そのため、まとめにも書きましたが、
『極限値が直接求まらなくても、大小関係は比較することができる。』
という点を、よく覚えておきましょう。
以上、「数列の極限の大小関係」についてでした。