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初項\(a\)、公比\(r\)の等比数列\(\{ar^{n-1}\}\)の極限には、
- \(r>1\)のとき、\(a_n \underset{n\to \infty}{\longrightarrow} \infty\)
- \(r=1\)のとき、\(a_n \underset{n\to \infty}{\longrightarrow} a\)
- \(0<r<1\)のとき、\(a_n \underset{n\to \infty}{\longrightarrow} 0\)
- \(-1<r<0\)のとき、\(a_n \underset{n\to \infty}{\longrightarrow} 0\)
- \(r<-1\)のとき、\(a_n \underset{n\to \infty}{\longrightarrow} 振動\)
という性質がある。
ただし、これは覚えるのではなく、実際に調べた方がラク。
この記事を読むと、この問題が瞬間的にわかる!
- $$\lim_{n\to\infty}\frac{2^n+1}{3^n}$$
- $$\lim_{n\to\infty}\frac{2^n-(-5)^n}{(-5)^n+3^n}$$
Contents
かける数によって、どのように数が変わるのか
「等比数列の極限」とタイトルをつけていますが、結論から言ってしまえば、別に「等比数列だから特別なことがある」というわけではありません。
等比数列よりも、どちらかと言えば「掛け算」の性質に近いです。
じっくり具体例を見ながら考えていきましょう。
公比が1よりも大きい場合
例題
数列\(\{a_n\}\)の一般項が
$$a_n = 3\cdot 2^{n-1}$$
のとき、この数列の極限を求めよ。
初項が3、公比が2。
この数列はつまり、「3に2をどんどんかけていく」ということを表しています。
このように、公比が1よりも大きい数列の場合、項が進むにつれて値は大きくなっていきます。
よって、
ということが分かりますね。
公比が0以上1以下の場合
例題
数列\(\{a_n\}\)の一般項が
$$a_n = 3\cdot \left(\frac{1}{2}\right)^{n-1}$$
のとき、この数列の極限を求めよ。
初項が3、公比が\(\frac{1}{2}\)。
この数列はつまり、「3に\(\frac{1}{2}\)をどんどんかけていく」ということを表しています。
ポイント
公比が分数のとき、小数に直して考えてみると考えやすくなる。
\(\frac{1}{2}=0.5\)と1よりも小さく、掛けるたび値は半分になっていきますね。
そのため、項が進むにつれて値はどんどん小さくなりますが、決して0にはなりません。
よって、
ということが分かります。
公比が1の場合
例題
数列\(\{a_n\}\)の一般項が
$$a_n = 3\cdot 1^{n-1}$$
のとき、この数列の極限を求めよ。
よって、
ということが分かります。
公比が負の場合
公比が負の場合には、2パターン考えることができます。
どちらもギザギザな動きをすることが特徴的ですが、発散か・収束かが異なります。
絶対値が1よりも大きい
例題
数列\(\{a_n\}\)の一般項が
$$a_n = \left(-\frac{11}{10}\right)^{n-1}$$
のとき、この数列の極限を求めよ。
ポイント
公比が負のとき、\(-1\)を切り離して考えてみると考えやすくなる。
初項が1、公比が\((-1)^{n-1}\times\left(\frac{11}{10}\right)^{n-1}\)。
一旦\(-1\)を除外して考えてみると、1に\(\frac{11}{10}\)をかけ続けると値は次第に大きくなっていきますね。
ここで\(-1\)をかけ続けるとどうなるか考えてみると・・・。
グラフで捉えてみると、
このように振動していることが分かります。
よって、
ということが分かります。
絶対値が1よりも小さい
例題
数列\(\{a_n\}\)の一般項が
$$a_n = 5\left(-\frac{12}{13}\right)^{n-1}$$
のとき、この数列の極限を求めよ。
先ほどと同様に、\(-1\)を切り離して考えてみましょう。
初項5に\(\frac{12}{13}\)をかけ続けると・・・
そして、\(-1\)をかけ続けるとどうなるか考えてみると・・・。
グラフで捉えてみると、
これは振動ではありません。
極限の基礎の記事でも紹介した通り、振動とはプラマイが入れ替わると同時に、発散する場合のことです。
今回はギザギザに動いてはいますが、値が小さくなり、最終的に0に収束しているため
ということが分かります。
等比数列の極限の性質
以上のことをまとめると、
ポイント
初項\(a\)、公比\(r\)の数列\(\{ar^{n-1}\}\)の極限は、
- \(r>1\)のとき、\(a_n \underset{n\to \infty}{\longrightarrow} \infty\)
- \(r=1\)のとき、\(a_n \underset{n\to \infty}{\longrightarrow} a\)
- \(0<r<1\)のとき、\(a_n \underset{n\to \infty}{\longrightarrow} 0\)
- \(-1<r<0\)のとき、\(a_n \underset{n\to \infty}{\longrightarrow} 0\)
- \(r<-1\)のとき、\(a_n \underset{n\to \infty}{\longrightarrow} 振動\)
となります。
等比数列の極限の例題
例題
$$\lim_{n\to\infty}\frac{2^n+1}{3^n}$$
そのまま考えると、\(\frac{\infty}{\infty}\)の不定形になってしまいますね。
そこで分母、分子を\(2^n\)で割って繁分数を考えてみると、
となります。
\(\left(\frac{3}{2}\right)^n\)は初項\(\frac{3}{2}\)に、\(\frac{3}{2}\)をかけ続けるわけですから値は次第に大きくなります。
一方、\(\left(\frac{1}{2}\right)^n\)は初項\(\frac{1}{2}\)に、\(\frac{1}{2}\)をかけ続けるわけですから値は次第に小さくなります。
つまり、
となります。
メモ
今回は分母、分子を\(2^n\)で割りましたが、\(3^n\)で割っても結果は同じです。
$$\frac{2^n+1}{3^n}=\left(\frac{2}{3}\right)^n+\left(\frac{1}{3}\right)^n$$
なので、
\begin{align} \lim_{n\to\infty}\frac{2^n+1}{3^n} &= \lim_{n\to\infty} \left(\left(\frac{2}{3}\right)^n+\left(\frac{1}{3}\right)^n\right) \\\ &= 0\\\ \end{align}
まとめ
今日のまとめをするよ!
まとめ
初項\(a\)、公比\(r\)の等比数列\(\{ar^{n-1}\}\)の極限には、
- \(r>1\)のとき、\(a_n \underset{n\to \infty}{\longrightarrow} \infty\)
- \(r=1\)のとき、\(a_n \underset{n\to \infty}{\longrightarrow} a\)
- \(0<r<1\)のとき、\(a_n \underset{n\to \infty}{\longrightarrow} 0\)
- \(-1<r<0\)のとき、\(a_n \underset{n\to \infty}{\longrightarrow} 0\)
- \(r<-1\)のとき、\(a_n \underset{n\to \infty}{\longrightarrow} 振動\)
という性質がある。
ただし、これは覚えるのではなく、実際に調べた方がラク。
今回学んだことは、今後極限の計算をしていく上で重要な考え方になります。
公式として覚えずに、公比を見極めて『かけ続けるとどうなるか』を考えていきましょう。
以上、「等比数列の極限について」でした。
チェック問題
例題
$$\lim_{n\to\infty}\frac{2^n-(-5)^n}{(-5)^n+3^n}$$
\(3^n\)や\(2^n\)で割ると、振動する部分が出てくるため考えにくくなります。
\((-5)^n\)で割ると、
\begin{align} \lim_{n\to\infty}\frac{2^n-(-5)^n}{(-5)^n+3^n} &= \lim_{n\to\infty}\frac{\left(-\frac{2}{5}\right)^n-1}{1+\left(-\frac{3}{5}\right)^n}\\\ &= \frac{0+0}{1}\\\ &=0\\\ \end{align}