Today's Topic
とりあえず、リミットには分配法則が成り立つと考えても良い。
ただし発散する場合は
- $$\infty + \infty = \infty$$
- $$\infty \times \infty = \infty$$
- $$\infty + 定数 = \infty$$
- $$\infty \times 定数= \infty$$
と考えていることと、これらの式に意味はないので解答に書かないこと。
また、分配法則をして不定形になってしまう場合は、何らかの処理が必要であることを示している。
この記事を読むと、この問題が解ける!
- $$\lim_{n\to\infty}\frac{2n^2-5}{n^2+4}$$
- $$\lim_{n\to\infty} \frac{4n^2+7}{3n^2-1}$$
リミットの分配法則
極限の分野で初めて登場したリミットには、次のような分配法則が成り立ちます。
ポイント
2つの数列\(\{a_n\},\ \{b_n\}\)が共に収束して、\(\mathbf{a_n \underset{n\to \infty}{\longrightarrow} \alpha, b_n \underset{n\to \infty}{\longrightarrow} \beta}\)であることが確定しているとき、
- $$\lim_{n\to\infty} ka_n = k\lim_{n\to \infty} a_n =k\alpha$$
- $$\lim_{n\to\infty} \left(a_n \pm b_n \right) =\lim_{n\to\infty}a_n \pm \lim_{n\to\infty}b_n = \alpha \pm \beta$$
- $$\lim_{n\to\infty} a_n \cdot b_n = \lim_{n\to\infty}a_n \cdot \lim_{n\to\infty} b_n = \alpha \cdot \beta$$
- $$\lim_{n\to\infty}\frac{a_n}{b_n}= \frac{\lim_{n\to\infty} a_n}{\lim_{n\to\infty} b_n}= \frac{\alpha}{\beta}$$
(※見切れている場合はスクロール)
のようにリミットの分配法則が成り立つ。
ただし・・・
太字でむちゃくちゃ強調していますが、リミットの分配法則はあくまで\(\mathbf{a_n \underset{n\to \infty}{\longrightarrow} \alpha, b_n \underset{n\to \infty}{\longrightarrow} \beta}\)であることが確定しているときのみ使えます。
発散する場合はどうなるか
それでは例として\(a_n \underset{n\to \infty}{\longrightarrow} \infty, b_n \underset{n\to \infty}{\longrightarrow} \infty\)の場面を見てみましょう。
仮に発散する場合でも、リミットの分配法則が成り立つと認めてしまうとどうなるのでしょうか。
例題
$$\lim_{n\to \infty} \frac{n}{n}$$
\(n\underset{n\to \infty}{\longrightarrow} \infty\)なので、
となりますね。
ところで、当然ですが\(\frac{n}{n}=1\)なので、
より極限値は1のはず。
つまり
ということが言えるわけです。
では次の例題はどうでしょうか。
例題
$$\lim_{n\to \infty} \frac{n}{2n}$$
先ほどと同様に考えてみましょう。
\(n\underset{n\to \infty}{\longrightarrow} \infty, \ 2n\underset{n\to \infty}{\longrightarrow} \infty \)なので、
となりますね。
当然ですが\(\frac{n}{2n}=\frac{1}{2}\)なので、
より極限値は\(\frac{1}{2}\)のはず。
つまりここでは
ということが言えるわけです。
そうです。
このように発散の場合でもリミットの分配法則を認めてしまうと、\(\frac{\infty}{\infty}\)のような『式によって中身の値が変わる不思議な変数』が登場します。
つまり解として、全く成立していないということになるのです。
メモ
問題:\(x+4=2\)のとき、\(x\)の値はいくらか。
解答:適当な変数\(a\)を定める。このとき\(x=a\)と表せる。よって答えは\(a\)。
これは解答になっていませんね?
不定形を解にするということは、適当な変数\(a\)を解答にすることと全く同じで、何も解決していません笑
具体的な問題の捉え方
さて、ここまでは数学的な話をしてきましたが、実際僕ら理系が頭の中で何を考えているのかというと、
です。
不定形にならない場合
ここでも例として\(a_n \underset{n\to \infty}{\longrightarrow} \infty, b_n \underset{n\to \infty}{\longrightarrow} \infty\)の場面を見てみましょう。
例題
$$\lim_{n\to\infty} \left(3n + 2n\right)$$
まずはそのまま考えると、\(3n + 2n =5n\)ですから、
となりますね。
では、リミットの分配法則を認めるとどうでしょうか。
となってしまいますね。
はい、違います。
数学における\(\infty\)は『むちゃくちゃ大きい』という記号であり、数という扱いはしていません。
そのため、\(\infty + \infty\)は『パンダ+パンダ』と同じくらい、数的な意味を持たない計算をしていることになります。
ただ感覚的に考えてみると、「むちゃくちゃ大きい」+「むちゃくちゃ大きい」=「むちゃくちゃ大きい」となりませんか?
そこで、\(\infty+\infty = \infty\)というふうに考えれば、
と考えても良さそうです。
- 収束するときしか成り立たないリミットの分配法則を使っている
- 『パンダ+パンダ』みたいな式\(\infty+\infty\)を使っている
ことから、解答に書くとバツを食います!
このように、同じ発散でも
- $$\infty + \infty = \infty$$
- $$\infty \times \infty = \infty$$
- $$\infty + 定数 = \infty$$
- $$\infty \times 定数= \infty$$
は感覚的に当然な気がしますので、次のように分配法則を拡張して捉えてもOKです。
ポイント
\(\mathbf{a_n \underset{n\to \infty}{\longrightarrow} \infty, b_n \underset{n\to \infty}{\longrightarrow} \infty}\)であるとき、
- $$\lim_{n\to\infty} ka_n = k\lim_{n\to \infty} a_n =k\infty =\infty$$
- $$\lim_{n\to\infty} \left(a_n + b_n \right) =\lim_{n\to\infty}a_n + \lim_{n\to\infty}b_n = \infty + \infty=\infty$$
- $$\lim_{n\to\infty} a_n \cdot b_n = \lim_{n\to\infty}a_n \cdot \lim_{n\to\infty} b_n = \infty \cdot \infty=\infty$$
(※見切れている場合はスクロール)
のようにリミットの分配法則が成り立つと考えてもOK。ただし解答には書くな!
不定形になる場合
例題
$$\lim_{n\to\infty} \frac{3n+2}{2n+1}$$
\(3n+2\underset{n \to \infty}{\longrightarrow} \infty, \ 2n+1\underset{n\to \infty}{\longrightarrow} \infty \)なので、本来リミットの分配法則は成り立ちません。
仮に成り立つと仮定してみると、
となり、不定形になってしまいます。
しかし、
のように繁分数の処理をしてあげると、\(3+\frac{2}{n}\underset{n \to \infty}{\longrightarrow} 3, \ 2+\frac{1}{n} \underset{n\to \infty}{\longrightarrow} 2 \)のように収束することになります。
つまり、リミットの分配法則がバリバリ使える形に変形できたというわけです。
よって、
のようになります。
このように、無限大に発散する場合でも、とりあえずリミットの分配を認めておき、もし仮に不定形になったとしたら
『あ、不定形を避ける何らかの処理が必要だな』
と判断することができます。
不定形は\(\frac{\infty}{\infty}\)含め7種類あり、その回避方法も様々です。
不定形については、『【不定形】種類・なぜ解にならないのか・回避方法をまとめました。』で解説します。
まとめ
今日のまとめをします。
まとめ
とりあえず、リミットには分配法則が成り立つと考えても良い。
ただし発散する場合は
- $$\infty + \infty = \infty$$
- $$\infty \times \infty = \infty$$
- $$\infty + 定数 = \infty$$
- $$\infty \times 定数= \infty$$
と考えていることと、これらの式に意味はないので解答に書かないこと。
また、分配法則をして不定形になってしまう場合は、何らかの処理が必要であることを示している。
今回は理系脳の考えている『極限』の捉え方を扱いました。
数学的には収束するときのみ、リミットの分配法則が成り立つのですが、まぁ拡大解釈しても解答に書かなければ大丈夫だろうという思考です。
この理解が曖昧なまま、リミットを分配していると後々積むので、あくまで拡大解釈しているんだという認識を忘れないでください。
以上、「極限の性質について」でした。
チェック問題
例題
$$\lim_{n\to\infty}\frac{2n^2-5}{n^2+4}$$
(解答)
そのまま考えると、\(\frac{\infty}{\infty}\)の不定形になってしまいます。そこで、
\begin{align} \lim_{n\to\infty} \frac{2n^2-5}{n^2+4} &= \lim_{n\to\infty} \frac{2-\frac{5}{n^2}}{1+\frac{4}{n^2}}\\\ \end{align}
のように変形すると、
極限\( 2-\frac{5}{n^2} \underset{n\to \infty}{\longrightarrow} 2,\ 1+\frac{4}{n^2}\underset{n\to \infty}{\longrightarrow} 1\)より
\begin{align} \lim_{n\to\infty} \frac{2n^2-5}{n^2+4} &= \lim_{n\to\infty} \frac{2-\frac{5}{n^2}}{1+\frac{4}{n^2}}\\\ &= \frac{2}{1}\\\ &= 2\\\ \end{align}
例題
$$\lim_{n\to\infty} \frac{n^2}{3-2n}$$
(解答)
そのまま考えると、\(\frac{\infty}{-\infty}\)の不定形になってしまいます。そこで、
\begin{align} \lim_{n\to\infty} \frac{n^2}{3-2n} &= \lim_{n\to\infty} \frac{n}{\frac{3}{n}-2}\\\ \end{align}
のように変形すると、
極限\( \frac{3}{n}-2 \underset{n\to \infty}{\longrightarrow} -2\)より
\begin{align} \lim_{n\to\infty} \frac{n^2}{3-2n} &= \lim_{n\to\infty} \frac{n}{\frac{3}{n}-2}\\\ &= \frac{\infty}{-2}\\\ &= -\infty\\\ \end{align}