Today's Topic
無限級数の分配法則を使うためには、
- それぞれの数列が収束することを確認し、
- それぞれの無限級数が収束することを確認し、その和を求める。
- 和が求められたら分配法則を使う。
注意
今回の記事の内容は、リミットの分配法則の影響を強く受けています。
そのため、事前にリミットの分配法則についてしっかり理解しておくことをオススメします〜。
-
【極限の性質】リミットには分配法則が成り立つが、特殊な解釈をしているゾ!
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この記事を読むと、この問題がしっかり解ける!
- $$\sum_{n=1}^{\infty} \frac{5^n-2^n}{10^n}$$
- $$\sum_{n=1}^{\infty} \frac{1}{n(n+1)}$$
Contents
無限級数の計算法則
ポイント
2つの無限級数について
$$\sum_{n=1}^{\infty} a_n = \alpha,\ \sum_{n=1}^{\infty} b_n = \beta$$
のように収束する場合のみ、次のことが成り立つ。
- $$\sum_{n=1}^{\infty} ka_n = k\sum_{n=1}^{\infty} a_n = k\alpha$$
-
$$\sum_{n=1}^{\infty}\left(a_n \pm b_n\right) = \sum_{n=1}^{\infty}a_n \pm \sum_{n=1}^{\infty} b_n = \alpha+\beta $$
(※見切れている場合はスクロール)
感覚的な話をすると、無限級数
にも分配法則が適用できるという感じですね。
証明
例として、2つ目の公式の証明をしてみましょう。
(証明)
(※見切れている場合はスクロール)
のようにシグマは分配することができる。
無限級数を求めるためには、
を計算すればよかった。
参考【無限級数】の定義と、収束・発散を調べるためのコツをまとめました
よって、
のようになる。
ここで、リミットの分配法則
2つの数列\(\{a_n\},\ \{b_n\}\)が共に収束して、\(\mathbf{a_n \underset{n\to \infty}{\longrightarrow} \alpha, b_n \underset{n\to \infty}{\longrightarrow} \beta}\)であることが確定しているとき、
(※見切れている場合はスクロール)
のようにリミットの分配法則が成り立つ。
を考える。
すると、無限級数
が収束する場合のみ、リミットを分配することができることがわかる。
よって、
を仮定する時、
(※見切れている場合はスクロール)
がいえる。
解法のポイント
今回の公式の条件として、非常に重要なのが、
のように収束する場合のみ
成り立つという点です。
つまり解答の中で、無限級数が収束することを述べなければ、分配法則をしてはいけないということになります。
例題
$$無限級数\sum_{n=1}^{\infty} \frac{2^n+3^n}{6^n}$$の和を求めよ。
(解答)
\begin{align} \frac{2^n+3^n}{6^n} &= \frac{2^n}{6^n}+\frac{3^n}{6^n}\\\ &= \left(\frac{1}{3}\right)^n + \left(\frac{1}{2}\right)^n\\\ \end{align}
無限等比級数
$$\sum_{n=1}^{\infty}\left(\frac{1}{3}\right)^n,\ \sum_{n=1}^{\infty}\left(\frac{1}{2}\right)^n$$
は公比がそれぞれ\(\frac{1}{3}<1,\ \frac{1}{2}<1\)でありことから、収束する可能性がある。\(\cdots(1)\)
\begin{align} \sum_{n=1}^{\infty} \left(\frac{1}{3}\right)^n &= \lim_{k\to\infty}\sum_{n=1}^{k} \left(\frac{1}{3}\right)^n \\\ &= \lim_{k\to\infty} \frac{\frac{1}{3}\left(1-\left(\frac{1}{3}\right)^n\right)}{1-\frac{1}{3}}\\\ &= \frac{1}{2}\\\ \end{align}
\begin{align} \sum_{n=1}^{\infty} \left(\frac{1}{2}\right)^n &= \lim_{k\to\infty}\sum_{n=1}^{k} \left(\frac{1}{2}\right)^n \\\ &= \lim_{k\to\infty} \frac{\frac{1}{2}\left(1-\left(\frac{1}{2}\right)^n\right)}{1-\frac{1}{2}}\\\ &= 1\\\ \end{align}
のように収束する。\(\cdots(2)\)
よって、
\begin{align} \sum_{n=1}^{\infty} \frac{2^n+3^n}{6^n} &= \sum_{n=1}^{\infty} \left(\frac{1}{3}\right)^n+ \sum_{n=1}^{\infty} \left(\frac{1}{2}\right)^n \\\ &= \frac{1}{2} + 1\\\ &= \frac{3}{2}\\\ \end{align}
この解答には、重要なポイントが2つあります。
無限級数が収束するためには、数列が収束していなければならない
(1)のところに書いてあるとおり、2つの無限級数
が収束するかを調べる際、まずはその数列\(\left(\frac{1}{3}\right)^n,\ \left(\frac{1}{2}\right)^n\)が収束する数列であることを確認しています。
しかし数列が収束するからと言って、その無限級数は収束するとは限りません。
あくまで『発散する可能性がないことを確認している』だけ。
参考【無限級数の収束・発散条件】無限級数を見ただけで解答が思い浮かぶテクニック
無限級数が実際に収束することを確認する
今回のテーマである無限級数の分配法則は、あくまで分配後の無限級数が収束する場合のみ行うことができました。
(1)の段階で発散することがないことを確認し、(2)の段階で実際に無限級数の和を求めることで収束することを確認しています。
この(2)の記述がないまま、最後の式変形にあるような、無限級数の分配法則を行うと減点対象なので気をつけましょう。
まとめ
まとめ
無限級数の分配法則を使うためには、
- それぞれの数列が収束することを確認し、
- それぞれの無限級数が収束することを確認し、その和を求める。
- 和が求められたら分配法則を使う。
無限級数の計算自体、それほど複雑なものが出るわけでもないですし、ガッツリ出題されることも多くありません。
しかし、積分の区分求積法をはじめ、意外なところでつまずく要因となりますので、
無限級数の分配法則は、分配後の無限級数たちが収束することを確認しないと使えない
ということをしっかり頭に入れておきましょう。
以上、「無限級数の計算法則」についてでした。
チェック問題
例題
次の無限級数の和を求めよ。
$$\sum_{n=1}^{\infty} \frac{5^n-2^n}{10^n}$$
step
1数列が収束することを確かめよう。
2つの数列\(\left\{\left(\frac{1}{2}\right)^n\right\},\ \left\{\left(\frac{1}{5}\right)^n\right\}\)はどちらも収束するので、無限級数
はどちらも収束する可能性がある。
step
2無限級数が収束することを確かめよう。
よって、2つの無限級数はともに収束することが確認できた。
step
3無限級数の分配法則を使おう。
以上より、
例題
次の無限級数の和を求めよ。
$$\sum_{n=1}^{\infty} \frac{1}{n(n+1)}$$
ここに注意
何でもかんでも分配していいというわけではありません!
この問題は無限級数の分配法則が使えますが、答えは導けません。
(※見切れている場合はスクロール)
\(k\to\infty\)のときを考えると、
よって、