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はじめに・・・
極限は高校数学の後半で初めて登場する概念ですが、そのイメージは字面ではなかなか掴みづらいものがあります。
差がつく!
極限には『数列の極限』『関数の極限』の2種類がありますが、その違いを一望する機会というものはなかなかなく、それが実は極限が難しく感じる原因になっていたりします。
そのため、まずは極限のイメージを簡単でもいいので持っておくことをオススメします!
極限のイメージ
- 数列の極限は\(n\rightarrow\infty\)のみを考える。グラフを意識すると考えやすくなる。
- 関数の極限は\(x\)をいろんな値に近づけることができるが、近づけ方も考える必要がある。
- 極限を考えると数学的に「おおよそどんな値になるか」を考えられる。
参考【超簡単】極限って何?数学のリミットが意味することを図的に理解してみよう。
数列の極限
無限数列と極限の基礎
数列の極限
数列\(\left\{a_n\right\}\)が\(n\to\infty\)のとき、ある値\(\alpha\)に近づくとき、\(\alpha\)を極限値といい、数列は収束するという。
収束しない数列は発散する。
数列が収束するかどうか調べるためには、
- グラフをもとに考える
- 極限公式をもとに考える
のどちらかを用いれば良い。
参考【発散・収束・振動】無限数列から始める、極限の着目すべき点と考え方
数列の極限の性質
2つの数列\(\{a_n\},\ \{b_n\}\)が共に収束して、\(\mathbf{a_n \underset{n\to \infty}{\longrightarrow} \alpha, b_n \underset{n\to \infty}{\longrightarrow} \beta}\)であることが確定しているとき、
- $$\lim_{n\to\infty} ka_n = k\lim_{n\to \infty} a_n =k\alpha$$
- $$\lim_{n\to\infty} \left(a_n \pm b_n \right) =\lim_{n\to\infty}a_n \pm \lim_{n\to\infty}b_n = \alpha \pm \beta$$
- $$\lim_{n\to\infty} a_n \cdot b_n = \lim_{n\to\infty}a_n \cdot \lim_{n\to\infty} b_n = \alpha \cdot \beta$$
- $$\lim_{n\to\infty}\frac{a_n}{b_n}= \frac{\lim_{n\to\infty} a_n}{\lim_{n\to\infty} b_n}= \frac{\alpha}{\beta}$$
参考【極限の性質】リミットには分配法則が成り立つが、特殊な解釈をしているゾ!
差がつく!
不定形
不定形は以下7つのことを言い、解としては採用できない。
- $$\frac{0}{0}$$
- $$\frac{\infty}{\infty}$$
- $$0\times \infty $$
- $$\infty - \infty$$
- $$1^{\infty}$$
- $$0^0$$
- $$\infty^0$$
参考【不定形】種類・なぜ解にならないのか・回避方法をまとめました。
極限の大小関係
収束する2つの数列\(\{a_n\},\{b_n\}\)の極限は、極限値を求めなくても
$$a_n≦b_n\ (n=1,2,3,\cdots)$$
であれば、\(\alpha ≦ \beta\)となる。
これにより、極限値が直接求まらなくても、大小関係は比較することができる。
参考【数列の極限の大小関係】イメージでわかる、知っててアタリマエの公式
等比数列の極限
初項\(a\)、公比\(r\)の等比数列\(\{ar^{n-1}\}\)の極限には、
- \(r>1\)のとき、\(a_n \underset{n\to \infty}{\longrightarrow} \infty\)
- \(r=1\)のとき、\(a_n \underset{n\to \infty}{\longrightarrow} a\)
- \(0<r<1\)のとき、\(a_n \underset{n\to \infty}{\longrightarrow} 0\)
- \(-1<r<0\)のとき、\(a_n \underset{n\to \infty}{\longrightarrow} 0\)
- \(r<-1\)のとき、\(a_n \underset{n\to \infty}{\longrightarrow} 振動\)
という性質がある。
ただし、これは覚えるのではなく、実際に調べた方がラク。
参考【等比数列の極限】暗記は絶対にダメ!絶対必要な極限の感覚をマスターしよう。
はさみうちの原理・追い出しの原理
はさみうちの原理
はさみうちの原理を使うためには、
-
STEP1与えられた数列\(\{b_n\}\)の極限が求めにくい場合、一旦諦めよう。式変形してゴリゴリ計算しているのに、不定形が解消されない場合や、数列の一部が振動する場合は、はさみうちの原理を考えてみます。
-
STEP2次の条件を満たす数列\(\{a_n\},\{c_n\}\)を作り出す。
- \(\{a_n\},\{c_n\}\)が同じ値に収束すること
- どんな自然数\(n\)に対しても、\(a_n≦b_n≦c_n\)が成り立つ
-
STEP3はさみうちの原理を使って、おしまい\(\{a_n\},\{c_n\}\)が同じ値に収束すること、そしてはさみうちの原理から\(\{b_n\}\)も同じ値に収束することを言えばOK
のようにすれば良い。
参考【はさみうちの原理】の使い方や、使う問題の見分け方を直感で分かるようになろう
差がつく!
追い出しの原理
2つの数列\(\{a_n\},\{b_n\}\)が、どの項でも\(a_n≦b_n\ (n=1,2,3,\cdots)\)となるとき
$$a_n \underset{n\to \infty}{\longrightarrow} \inftyならばb_n \underset{n\to \infty}{\longrightarrow} \infty$$
$$b_n \underset{n\to \infty}{\longrightarrow} -\inftyならばa_n \underset{n\to \infty}{\longrightarrow} -\infty$$
参考【追い出しの原理】不等式を作って、発散することを示せばOK。あんまり使われないけどね・・・。
無限級数
無限級数
無限数列\(\{a_n\}\)の無限級数$$\sum_{n=1}^{\infty} a_n$$を調べるためには、
- 第\(n\)項までの部分和\(S_n\)を求め、
- $$\lim_{n\to\infty} S_n$$を考えれば良い。
このとき、\(S_n\)の極限値のことを、無限級数の和と呼ぶ。
参考【無限級数】の定義と、収束・発散を調べるためのコツをまとめました。
無限等比級数
初項\(a\)、公比\(r\)の無限等比数列\(\{ar^{n-1}\}\)において、\(|r|<1\)のとき、無限級数の和は\(\frac{a}{1-r}\)に収束する。
ただしあまり覚えても効果ない。
参考【無限等比級数】新しく覚えることは何もない!?無駄な努力をやめよう!
無限級数の性質
2つの無限級数について
$$\sum_{n=1}^{\infty} a_n = \alpha,\ \sum_{n=1}^{\infty} b_n = \beta$$
のように収束する場合のみ、次のことが成り立つ。
- $$\sum_{n=1}^{\infty} ka_n = k\sum_{n=1}^{\infty} a_n = k\alpha$$
-
$$\sum_{n=1}^{\infty}\left(a_n \pm b_n\right) = \sum_{n=1}^{\infty}a_n \pm \sum_{n=1}^{\infty} b_n = \alpha+\beta $$
(※見切れている場合はスクロール)
参考【無限級数の性質】無限級数にも分配法則が使える!?ただし、条件付き!
差がつく!
無限級数の収束・発散
無限数列\(\{a_n\}\)の無限級数\(\sum_{n=1}^{\infty} a_n\)について、
$$\sum_{n=1}^{\infty} a_nが収束する\Longrightarrow \lim_{n\to\infty} a_n =0$$
また、この対偶をとると、
$$\lim_{n\to\infty} a_n \neq 0 \Longrightarrow \sum_{n=1}^{\infty} a_nは発散する$$
参考【無限級数の収束・発散条件】無限級数を見ただけで解答が思い浮かぶテクニック
関数の極限
関数の極限の基礎
左極限・右極限と関数の極限の存在
関数\(y=f(x)\)が\(x=a\)において、
- 左極限\(f(x) \underset{x\to a-0}{\longrightarrow} \alpha\)
- 右極限\(f(x) \underset{x\to a+0}{\longrightarrow} \beta\)
となるとき、\(\alpha = \beta\)であれば関数\(f(x)\)の極限値は\(\alpha\)であると定義する。
参考【関数の極限】見落としがちな解法の重要ポイントを徹底解説!迷わずに解けるようになろう!
関数の極限の性質
2つの数列\(\{f(x)\},\ \{g(x)\}\)が共に収束して、\( f(x) \underset{x\to a}{\longrightarrow} \alpha, g(x) \underset{x \to a}{\longrightarrow} \beta \)であることが確定しているとき、
- $$\lim_{x\to a} kf(x) = k\lim_{x\to a} f(x) =k\alpha$$
- $$\lim_{x\to a} \left( f(x)+g(x) \right) =\lim_{x \to a}f(x) \pm \lim_{x\to a}g(x) = \alpha \pm \beta$$
- $$\lim_{x\to a} f(x) \cdot g(x) = \lim_{x\to a} f(x) \cdot \lim_{x\to a} g(x) = \alpha \cdot \beta$$
- $$\lim_{x\to a}\frac{f(x)}{g(x)}= \frac{\lim_{x\to a} f(x)}{\lim_{x\to a} g(x)}= \frac{\alpha}{\beta}$$
(※見切れている場合はスクロール)
のようにリミットの分配法則が成り立つ。
参考【関数の極限の性質】基本法則と必須条件:不定形になったときの対処法
グラフと極限
漸近線
曲線Cがある直線\(l\)にギリギリ近づくも、どこまでいっても接したり、交わったりすることがないとき、この直線\(l\)のことを漸近線という。
参考【漸近線】を調べ忘れる君へ漸近線に必要な知識を徹底的にまとめてみました。
関数\(f(x)\)が\(x=a\)で連続であるとは、
(※見切れている場合はスクロール)
を満たしていることを言う。
参考【連続である】って結局ナニ?定義の意味がイメージで簡単に理解できる!
いろいろな関数の極限
無理関数の極限
- そのまま極限を考えると\(\infty - \infty, \frac{0}{0}\)不定形になる場合、有理化を使うとうまくいく場合が多い。
- 負の無限大の極限を考える際、符号に注意する
参考【無理関数の微分公式】暗記0でOK。 たったの2ステップで秒速クリア
指数関数の極限
- 指数関数の極限を考えるためには、底の数に着目し、指数が大きくなるほど値が増えるのか、小さくなるのかを考えれば良い。
- 指数関数の極限で不定形になる場合は、積の形に持っていくと楽な場合が多い。
参考【指数関数の極限(基礎)】底に着目すれば暗記ゼロ!実践で使える指数関数の考え方
対数関数の極限
$$ \log \left(\lim_{x\to\infty} y\right) = \lim_{x\to\infty} \log y$$
参考【対数関数の極限(基礎)】実践で使える重要な性質と対数関数の極限の意味
差がつく!
指数・対数関数の応用公式
指数・対数関数の極限を考えるためには、
- $$\lim_{h\to 0} (1+h)^{\frac{1}{h}} = e$$
- $$\lim_{h\to \infty} \left(1+\frac{1}{h}\right)^{h} = e$$
- $$\lim_{h\to 0} \frac{\log (1+h)}{h} = 1$$
- $$\lim_{h\to 0} \frac{e^h - 1}{h} = 1$$
のどれかに帰着させて考えれば良い。
ただし、\(1^{\infty}\)不定形の場合は、ネイピア数の定義である公式1、もしくは公式2を使うと良い。
参考【指数・対数関数の極限】と応用公式|2つの不定形と4つの極限公式だけ覚えよう!
- $$\lim_{x\rightarrow 0}\frac{\sin x}{x}=1$$
- $$\lim_{x\rightarrow 0}\frac{\tan x}{x}=1$$
- $$\lim_{x\rightarrow 0}\frac{1-\cos x}{x^2}=\frac{1}{2}$$
参考sinの極限と応用公式|三角関数の極限の不定形はこいつで対処しろ
差がつく!
発散の速さ
参考【収束・発散の速さ】絶対に覚えておきたい極限の裏公式|見た瞬間に極限がヒラメク!
関数の連続性とその応用
差がつく!
中間値の定理
\(f(x) = k\)の解\(x\)が最低1つは存在することを確かめるためには、
- 与えられた方程式\(f(x)\)が閉区間上で連続であること
- 閉区間\([a,b]\)の端点の値\(f(a),\ f(b)\)が異なること
- \(f(a) < k f(b)\)であること
を示し、中間値の定理を用いれば良い。